研究課題
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セマフォリン及びセマフォリン受容体分子群をターゲットにした構造・機能解析と治療法開発

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代表機関:大阪大学微生物病研究所 (大阪大学免疫学フロンティア研究センター)
代表研究者:熊ノ郷 淳

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セマフォリンというタンパク質群には、30以上の種類が見つかっていて、生命現象において多彩な活性を示すことが知られています。分泌されるタイプと細胞膜に存在するタイプとがありますが、どちらも「セマドメイン」と呼ばれるアミノ酸配列をもっているのが、このタンパク質群の特徴です。それぞれのセマフォリン分子には、特異的に結びつくことのできる受容体が存在します。セマフォリンとその受容体との結合により、細胞間での情報の伝達が生じることになります。

セマフォリンの重要性が最初に注目されたのは、1990年代初めのことです。神経活動に伴って神経細胞の軸索が伸長し、神経の回路網が形成されますが、このときに、軸索の伸びる方向を決める要因の一つが、神経細胞間でのセマフォリンとその受容体との相互作用だったのです。ただし、セマフォリンの場合、軸索を伸ばすのではなく、軸索に対する反発を生じさせて伸長を抑制することにより、伸長方向を制御するという性質が最初に発見されました。最近の研究では、このセマフォリンのはたらきを阻害することにより、神経の再生を誘導できる可能性が見つかっています。

セマフォリンはまた、免疫系においても重要なはたらきを示すことを、私たちが最初に発見しました。病原体や異物に対して免疫反応が起こるには、T細胞やB細胞、樹状細胞などの各種の免疫系細胞が活性化される必要があります。そうした細胞の活性化に、セマフォリンとその受容体の相互作用が関与していることがわかったのです。そのほかにも免疫反応のいろいろな場面で、この分子群が活躍していることが明らかになりました。

セマフォリンとその受容体分子群のはたらきは、これだけにとどまりません。血管の形成、がんの進行、骨代謝の制御など、広範囲にわたる分野での作用も明らかになってきています。したがって、これらの分子群の機能を解明していくことにより、さまざまな疾患の治療薬を開発できる可能性があるのです。しかし、薬の開発を進めるには、これらの分子について、構造と機能を詳しく解明することが必要です。これまでは質の高い試料が得られなかったこともあり、構造はもちろん、生化学的な機能解析も十分には行えませんでした。そこで今回の研究では、試料の作製にさまざまな工夫をこらし、これらの分子群の構造解析を総合的に進めていきます。そして、その知見をもとに、分子間の相互作用を明らかにしていき、セマフォリンのはたらきを促進したり阻害したりする薬を探していく計画です。

セマフォリンとセマフォリン受容体群
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