研究課題
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がんや様々な疾病に関与するNPPファミリータンパク質の機能構造解析から創薬まで

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代表機関:東北大学大学院薬学研究科
代表研究者:青木淳賢

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細胞外の物質の代謝に関わるNPPというタンパク質群があります。最近、NPPが体内で種々の重要な役割を果たし、がんなどの病気にも深く関係していることがわかってきました。こうした成果には、私たちを含めた日本人研究者も大きく貢献してきました。世界中の研究者がNPPに着目し始めている中、私たちは創薬をめざした研究にいち早く取り組んでいます。

NPPは全部で7種類あり、私たちが当課題で扱うのはNPP1とNPP2とNPP6です。NPP1は骨の石灰化を調整している酵素で、最近ではヒトで、NPP1の遺伝子の異常により靭帯の一部が骨化する後縦靭帯骨化症という病気が引き起こされることがわかってきました。さらに、NPP1が糖尿病に関係している可能性も報告されています。

NPP2はリゾホスファチジン酸(LPA)という物質を産生します。LPAは、がんにみられる細胞増殖や細胞の浸潤・転移、そのほかにも傷の治癒、脳神経系の発達や分化、血管の形成などさまざまな生命現象に関与しています。実際、がん細胞でNPP2のはたらきが強くなっていることが報告されており、また、私たちはNPP2がアレルギーなどで生じる炎症にも関与していることを見いだしています。

NPP6はコリンを生成します。コリンは生体にとって必須な栄養成分であり、その欠乏によって脂肪肝、脳神経の発達異常など重篤な症状が引き起こされることが知られています。また、脊髄の損傷などで神経細胞の軸索が傷ついたときに、NPP6のはたらきによって回復が妨げられることもわかっています。

このように、NPPは創薬のターゲットとして非常に魅力的なタンパク質なのです。NPPは細胞膜に外から突きささったようなかたちで存在していますが、私たちはNPPの構造解析に向けて研究を進め、すでにNPP1と2と6の精製法を確立しました。ただし、NPPには長い糖の鎖が結合しているので、全体を結晶化するのは難しいかもしれません。そうした場合を想定して、分担研究者である東京大学医科学研究所の濡木理教授のグループが触媒部位のみを切り出してつくり、結晶化させる方法を試みています。

また一方で、やはり分担研究者の東北大学大学院薬学研究科の徳山英利教授のグループと岩渕好治教授のグループがもっている約6000種類の化合物から、化学的な手法でNPP1、2、6の阻害剤を見つけ出す研究を行っています。計画の後半では、NPPと基質(NPPが反応させる物質)や阻害剤が結合した構造を明らかにし、そこから得られた知見をもとに、阻害効果の高い化合物をつくろうと考えています。

7種類のNPPとその機能
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