研究課題
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核内レセプターの新規機能解析と構造情報に基づいた線維化疾患治療法の開発

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代表機関:筑波大学大学院生命環境科学研究科
代表研究者:柳澤 純

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私たちの組織や臓器は、コラーゲンなどの線維が存在するおかげで構造が保たれています。ところが、これらの線維が異常に増えてしまうことがあるのです。すると、組織は硬くなり、正常な機能が営めなくなり、例えば腎臓の糸球体硬化症、あるいは肝硬変や肺線維症などの線維化疾患が引き起こされます。有効な治療薬はまだ見つかっていません。

異常な線維化を引き起こす原因が、TGF-βという増殖因子のシグナルの過剰な活性化だということはわかっています。TGF-βが細胞膜にあるレセプターに結合すると、そのシグナルは細胞内のSmadというタンパク質分子に伝わります。そして、Smadは細胞の核内に移動して線維の合成にかかわる遺伝子の転写(遺伝子をもとにタンパク質がつくられる際の最初の段階)を促進し、線維化がもたらされるのです。TGF-βの阻害剤を投与すれば、線維化が防げるのですが、TGF-βには他にも重要な働きがあるので、それを阻害しては深刻な副作用が引き起こされてしまいます。

そこで私たちの研究チームでは、TGF-βシグナルが、線維化の起こる組織においてでのみ阻害されるような方法を研究しています。この方法の鍵は核内レセプターという分子が握っていることがわかっています。核内レセプターは、ホルモンなどのシグナルを受け取ると、核内で遺伝子の転写を調節するようにはたらく物質の総称で、組織や臓器により、さまざまな種類が存在します。私たちは、ある核内レセプターが、「タンパク質分解」というそれまで知られていなかった作用を発揮し、Smadを分解することを発見したのです。

これまでの研究で、このSmadの分解は、複雑なタンパク質複合体の形成を介して起こることがわかっています。今後は、この複合体の反応を、タンパク質の立体構造レベルで詳しく解析していくことにより、線維化の起こる組織で特異的にTGF-βシグナルを阻害する薬の候補化合物を開発していく計画でいます。そこで、タンパク質の構造と機能の知識に加えて、薬化学の知識を高いレベルで統合していくことが必要となります。そのため私たちは、分子生物学を専門にした筑波大学のグループ、構造生物学を専門とした横浜市立大学のグループ、有機化合物の合成を専門とした東京大学のグループ、薬剤のスクリーニングを行う株式会社アンクスのグループ、そして、臨床への応用を担当する東京慈恵会医科大学のグループが連携して、多角的に研究を進めていきます。

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