研究課題
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タンパク質構造に立脚したDOCK2シグナル伝達機構の解明と創薬研究への応用

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代表機関:九州大学生体防御医学研究所
代表研究者:福井宣規

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体をさまざまな感染から防御する免疫反応が起こるために、各種の免疫系細胞が働いています。これらの細胞の特徴の一つは、感染に素早く対応するため体内を絶えず動き回っているということです。私たちが発見したDOCK2というタンパク質は、リンパ球の内部に存在し、その移動(遊走)を制御している重要な因子です。私たちの研究チームでは、DOCK2についてさらなる解析を続け、免疫系疾患の治療に役立つ薬の開発につなげていきたいと考えています。

これまでの知見から、リンパ球などの免疫系細胞に移動を命じる最初のシグナルは、細胞外のタンパク質(ケモカインによってもたらされることが明らかになっています。ケモカインはリンパ球の細胞膜にある受容体に結びつき、その刺激が細胞内部に存在する因子に次々と伝わっていくのです。最終的にはRacという分子が活性化されてアクチン繊維に働きかけ、細胞の移動が起こります。DOCK2は、このRacの活性化に不可欠の分子です。またDOCK2はこれ以外にも、Racの活性化を介して、抗原の認識やアレルギー反応の制御に関わることがわかっています。

そこで私たちは、DOCK2を中心に、Rac活性化に至るシグナルの伝達経路に関与する分子の立体構造と機能を詳細に研究し、どんな分子がどのような相互作用を行っているのかを明らかにしようとしています。また、DOCK2は1828個のアミノ酸からなる大きな分子です。そこで、どの部位がどのような反応に関わっているのかも明らかにしていきたいと考えています。

体を守るはずの免疫システムが、自分自身の体を攻撃して深刻な問題を引き起こすことがあります。自己免疫疾患や臓器移植での拒絶反応です。私たちは、DOCK2をもたないマウスを作製し、そのマウスに心臓移植を行ったところ、免疫抑制剤を使用しなくても、移植心臓が長期にわたり生着できることを見いだしました。したがって、DOCK2の働きを阻害して、リンパ球の移動を阻止する薬が開発できれば、これらの不適切な免疫反応を抑制することができると期待できます。この研究を通じて、私たちはDOCK2のシグナルを阻害する薬の候補化合物を探していきたいと考えています。

タンパク質構造に立脚したDOCK2シグナル伝達機構の解明と創薬研究への応用
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