研究課題
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バイオマス植物の開発および食糧増産に役立つ植物環境応答タンパク質の構造・機能解析

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代表機関:奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科
代表研究者:島本 功

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世界の人口は増え続けており、食糧、特に穀物の不足が深刻化しています。穀物の不足は価格高騰を招き、途上国に飢餓や貧困をもたらしています。米以外の穀物を輸入に頼る日本にとっても、穀物不足は大きな問題です。

一方、近年、植物由来の原料から自動車などの燃料をつくる動きもさかんになっています。「バイオマス燃料」です。石油や石炭などの化石燃料には限りがありますが、植物は次々に育つので、バイオマス燃料は資源枯渇を防ぐのに役立つと考えられています。また、燃やしたときに出る二酸化炭素は植物が育つときに吸収したものであることから、地球環境にやさしいとの期待もあります。

こうした背景から、農作物やバイオマス燃料の原料となる植物の生産量を増やすことが強く求められています。しかし、病気や乾燥、強い光などの環境ストレスが原因で、農作物の生産量は本来の20%にまで下がっているといわれています。環境ストレスに強い植物を開発できれば、生産量を大幅に増やせる可能性があります。

私たちは、植物が光に応答するときにはたらくタンパク質について研究しています。光は、植物の色素に含まれるフィトクロムというタンパク質によって受容されます。この情報は光情報伝達因子を通じて、GI、Hd1、Hd3a、FDという4つのタンパク質に伝わり、これらが生長や開花を制御するのです。当課題では、この4つのタンパク質の構造解析を行い、植物が光という刺激に対して応答するしくみを明らかにします。特に私たちが同定した花成ホルモン(Hd3a)について研究を行います。

一方、私たちは、イネに含まれるRacというタンパク質が、病気の発生を抑えるスイッチとして機能していることを明らかにしました。病原体が入ってくると、RacはNADPHオキシダーゼ(リボン図参照)やCCRという酵素にはたらきかけてこれらを活性化し、活性化した酵素が病気に抵抗するための物質(活性酸素とリグニン)をつくるのです。本課題では、このRac、NADPHオキシダーゼ、CCRという3つのタンパク質の構造を解析し、Racが二つの酵素のそれぞれとどのように相互作用し、活性化するのかを明らかにします。

これらの研究が進むと、植物がどのようにして病気などのストレスに対処しているのか明らかになるでしょう。さらに、これらのタンパク質を利用して、さまざまなストレスを効率的に防御する植物をつくることもできるでしょう。ストレスを防御して作物の損害を抑えることができれば、低農薬農業を実現できるだけではなく、食糧や燃料となる植物を安定して生産できるようになるかもしれません。

花成ホルモン(Hd3a)による植物の開花のしくみ
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