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環境ストレス耐性作物の開発に役立つ転写制御タンパク質の構造・機能解析

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代表機関:名古屋大学生物機能開発利用研究センター
代表研究者:松岡 信

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動物にホルモンがあるように、植物にもホルモンがあります。その一つがジベレリンです。ジベレリンは、苗が異常に大きくなる「馬鹿苗病」というイネの病気から発見されました。発見の経緯からもわかるように、このホルモンは植物の細胞を伸長させて、生長を促す作用があります。

それでは、ジベレリンはどのようにして植物の生長に作用するのでしょう。ジベレリンがないときは、DELLAというタンパク質が植物の生長を抑えています。ところが、ジベレリンがあると、ジベレリンは細胞の核の中でGID1というタンパク質と結合し、これがさらにDELLAと結合してジベレリン-GID1-DELLA複合体をつくります。続いて、GID2というタンパク質が、複合体中のDELLAにユビキチンという小さなタンパク質を付け加えます(ユビキチン化といいます)。ユビキチン化されたDELLAは、26Sプロテアソームという酵素によって分解されてしまいます。すると、DELLAによって抑えられていた植物の生長が起こるのです。

このように、ジベレリンの作用はGID1、DELLA、GID2という3つのタンパク質が次々に相互作用することで発揮されます。最近、このうちのDELLAが、植物のストレス耐性の鍵となるタンパク質としても、機能していることが明らかになりました。つまり、この3つのタンパク質は、ジベレリンが来たぞという情報を伝えるだけではなく、ストレスに対応するときにも、情報を伝える働きをしていると考えられます。

そこで私たちは、ジベレリンと結合するGID1、植物の生長を抑制するDELLA、DELLAの分解を招くGID2という3つのタンパク質について、それぞれの立体構造を調べることにしました。そして、これらの構造から、植物の生長やストレス耐性が起こるしくみを理解しようとしています。

この研究が進むと、タンパク質同士の相互作用において重要な役割を果たすアミノ酸残基(タンパク質分子で、もとのアミノ酸1個分にあたるところ)が明らかになることが期待されます。このアミノ酸残基を他のものに変えると、ストレス耐性のある作物を新たにつくることができるかもしれません。

このように、GID1、DELLA、GID2という3つのタンパク質の構造を解析することは非常に有用ですが、結晶化が難しいため、まだ誰も成功していません。私たちは、その研究の先駆けとなり、農作物の増産に貢献したいと願っています。

環境ストレス耐性作物の開発に役立つ転写制御タンパク質の構造・機能解析
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