研究課題
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抗生物質やその他の有用物質生産に利用可能な鍵酵素の構造・機能解析

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代表機関:東京大学大学院農学生命科学研究科
代表研究者:堀之内末治(H19〜H21)、大西康夫(H21〜)

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生物がつくる物質のうち、糖、アミノ酸、脂質、核酸など、多くの生物に共通でその生物の生命活動に必須な物質を一次代謝産物と呼びます。一方、一次代謝産物からつくり出され、その生物の生命活動に必須でない独特な物質を二次代謝産物と呼びます。抗生物質や色素がその代表例です。人類は昔から、これらの二次代謝産物を薬・香料・染料などの生物資源として利用してきました。

土壌細菌である放線菌は抗生物質などさまざまな有用な二次代謝産物をつくります。私たちはその生産のしくみを明らかにし、二次代謝産物の増産や、新たな二次代謝産物の生産に役立てたいと考えています。そのために、生産の鍵となる酵素の構造を解析し、反応機構を詳しく調べます。さらに、その結果に基づいて酵素の改良を進めていきます。構造解析は、分担研究者である東京大学大学院農学生命科学研究科の田之倉優教授のグループと共同で行います。

当課題では、放線菌がグリキサゾンという二次代謝産物をつくるときにはたらく酵素に注目しました。中でも、GriI、GriHという酵素は、強度と耐熱性に優れたプラスチック(ポリベンズオキサゾール)の原料合成に利用でき、GriFという酵素も有用物質の生産に利用できるので、この3種類の酵素の構造と機能の解析に取り組みます。

また、グリキサゾンやほかの二次代謝産物の生産は、Aファクターというホルモンによって制御されています。私たちは、この機構にいくつものタンパク質が複雑に関係していることを突き止めており、そのうちでも、制御の要であるA-ファクター合成酵素(AfsA)と転写因子(AdpA)の構造と機能の解析を行います。

これらの研究をもとに、酵素を用いて有用物質を効率よく生産できるようにするのが第一の目標ですが、並行して、放線菌から新たな有用酵素を「発掘」することにも力を入れます。

一方、私たちは、ウコンの薬効成分であるクルクミンの合成酵素をイネから発見しています。これの構造解析も進め、産業応用につなげたいと考えています。

酵素を利用する生産法は従来の生産法に比べて低コストの上、効率も良く、環境負荷も格段に低くてすみます。また、バイオマスが原料であるため、資源の有効利用や二酸化炭素削減の観点からも期待される技術なのです。

抗生物質やその他の有用物質生産に利用可能な鍵酵素の構造・機能解析
抗生物質やその他の有用物質生産に利用可能な鍵酵素の構造・機能解析
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