研究課題
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直鎖状ポリユビキチン鎖による選択的NF-kB活性化機構(H21〜)

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代表機関:大阪大学大学院生命機能研究科
代表研究者:岩井一宏

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ユビキチン修飾系はE1(活性化酵素)/E2(結合酵素)/E3(ユビキチンリガーゼ)の3種の酵素群の働きにより、標的タンパク質に主としてタンパク質にユビキチンが数珠状に連なったポリユビキチン鎖を付加することで、タンパク質の機能を制御する翻訳後修飾系です。発見当初は、ポリユビキチン化タンパク質は全て分解に導かれると考えられていましたが、現在では、多彩な様式でタンパク質の機能を制御することが明らかになっています。生体には多様なポリユビキチン鎖が存在し、その種類によって標的タンパク質の制御様式が異なっています。従来報告されていたポリユビキチン鎖は全てユビキチンのリジンを介したものですが、私達は世界に先駆けてN末端のメチオニンを介する直鎖状ポリユビキチン鎖を選択的に生成するLUBACユビキチンリガーゼ複合体を見出しました。LUBACユビキチンリガーゼはHOIL-1L、HOIPの2つのタンパク質からなる高分子量複合体であり、NF-кBの選択的活性化に関与しています。

NF-кBは種々の刺激で活性化される細胞増殖、炎症、免疫応答等に関わっているヘテロ2量体からなる転写因子で、未刺激の状態では阻害タンパク質であるIкBαと結合して細胞質に存在しています。種々の刺激によってIKK複合体が活性化されると、IкBαがリン酸化、分解へと導かれ、IкBαから遊離したNF-кBは核に移行して種々の遺伝子の転写を亢進させることが知られています。私達は、LUBACはTNF-αなどの刺激依存的にNF-кBの活性化のキー分子であるNEMOに直鎖状ポリユビキチン鎖を付加することでIKK複合体を活性化させ、その結果としてNF-кBを選択的に活性化することを見つけました。

この研究ではLUBACリガーゼ複合体を構成するHOIL-1L、HOIPの2つのタンパク質に存在する種々のドメインの機能的および構造的解析を進め、LUBACリガーゼによるNF-кB活性化の分子メカニズムを探ります。NF-кBはリウマチ、アレルギー疾患のみならず、多発性骨髄腫をはじめとする種々のガンで活性亢進が知られていますので、NF-кB活性化の選択的な抑制剤は優れたリウマチ・アレルギー性疾患治療薬、抗ガン剤になる可能性があります。ですので、この研究で直鎖状ポリユビキチン鎖によるNF-кB選択的活性化機構が明らかになれば、選択的NF-кB活性制御薬の開発への道が拓ける可能性を夢見て研究を進めています。

直鎖状ポリユビキチン鎖による選択的NF-kB活性化機構
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