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小胞輸送を制御するタンパク質複合体の構造機能解析

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代表機関:高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所
代表研究者:若槻壮市

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私たちの体は約60兆個の細胞からできており、その細胞一つひとつが生物をつくる基本単位になっています。さらに細胞の中には膜で囲まれた「細胞小器官」という小さな区画がいくつもあり、細胞にとって必要なあらゆる仕事を分業しています。それぞれの細胞小器官で、はたらき手となるタンパク質や材料は異なります。そのため細胞小器官の間では絶えずさまざまな物質が移動しています。ただし、これらの物質が当てもなく浮遊しているだけでは、目的地になかなかたどり着けません。そこで、細胞内には「小胞輸送」というしくみが備わっています。小胞とは、細胞小器官の膜がくびれ、切り離されることでできる小さな袋のことです。膜がくびれるときに、細胞小器官の中にある物質が小胞に積み込まれます。そして、小胞が目的となる細胞小器官まで移動すると、今度はその細胞小器官の膜と融合して、積まれていた物質が受け渡されるのです。

小胞は、細胞小器官の間を複雑に行き来しています。こうした小胞輸送の一連のしくみは、さまざまなタンパク質複合体のはたらきによって制御されています。私たちは「タンパク3000プロジェクト」で、小胞輸送に関わるタンパク質の構造解析について、多くの成果を蓄積してきました。ただし、これらのタンパク質はいずれも水に溶けやすく、結晶化しやすいものばかりでした。実は、小胞輸送に関わるタンパク質は、複合体をつくっていたり膜に埋もれて存在する場合が多く、それらは元の構造のまま結晶化するのがとても難しいのです。

しかし、小胞輸送の仕組みを理解するためには、これを避けて通ることはできません。今回のプロジェクトで、私たちは難度の高いタンパク質複合体や膜に埋まった部分の構造機能解析に挑戦しています。まず、分担研究者である東京大学大学院理学系研究科の中野明彦教授、同大学院総合文化研究科の佐藤健准教授、京都大学大学院薬学研究科の中山和久教授のチームが、小胞輸送の諸過程でどのようなタンパク質が関わっているか、また、それらのタンパク質がどのようなネットワークを形成しているかを明らかにします。そうして得られた知見に基づいて、代表研究者である高エネルギー加速器研究機構のチームがタンパク質複合体や膜に埋まった部分のX線結晶構造解析を行い、これまで積み重ねてきた成果を発展させていこうと考えています。今後も世界をリードする研究を展開し、小胞輸送を制御するメカニズムの全体像に迫っていきます。

小胞輸送を制御するタンパク質複合体の構造機能解析
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