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巨大で複雑なタンパク分解装置の動態と作動機構

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代表機関:東京都医学研究機構 東京都臨床医学総合研究所
代表研究者:田中啓二

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体の細胞の中ではでさまざまなタンパク質がはたらいています。その一方で、役割を終えて不要になったタンパク質や、有害なタンパク質もあります。こうしたタンパク質を見分けて分解・除去するのがプロテアソーム(26Sプロテアソーム)です。プロテアソームは、タンパク質の寿命を決め、細胞内のタンパク質の量を調節しています。このようなタンパク質の死の制御は、代謝調節や免疫応答など多くの重要な生命活動に関与しているため、タンパク質の合成システムよりもむしろ重要なのではないかと近年注目を集めています。

私たちはこのプロテアソームの作動機構の解明をめざし、これまで10年間にわたって立体構造を解析してきました。プロテアソームは約100個もの分子からなる巨大なタンパク質複合体で、図のように、円筒の両端に蓋がついたかたちをしています。分解の標的となったタンパク質は円筒の中に取り込まれて分解されます。私たちはこれまでに、触媒としてはたらく円筒の中央部分(20Sプロテアソーム)の構造解析に成功していますが、調節部位(基底部と蓋部)についてはまだ詳細な構造が明らかになっていません。そこで私たちはこれらの構造解析に取り組み、プロテアソーム全体の構造を明らかにしていこうと考えています。

また、多数の分子が集まってプロテアソームができるときには、シャペロンと呼ばれるタンパク質が必要です。私たちはすでにプロテアソームの形成を支援する複数のシャペロンを発見しているので、それらの構造を解析するとともに、新たなシャペロンを発見し、プロテアソームがかたちづくられていく過程に迫りたいと考えています。細胞内にはプロテアソームのような複合体が他にもたくさんありますが、それらの形成過程はほとんど知られていません。この研究でプロテアソームの形成過程が明らかになれば、他の複合体形成過程の解明にも貢献できるはずです。

さらに、私たちは、プロテアソームが分解する相手を見分けたり、取り込んだりするときにはたらく因子についても研究を進めていきます。

以上のような研究は、薬剤開発への応用も期待されます。たとえば近年、プロテアソームのはたらきを抑える薬が多発性骨髄腫の特効薬的抗がん剤として世界中で使用されています。また、社会の高齢化に伴って患者数が増えているパーキンソン病やアルツハイマー病などもプロテアソームの破綻が一つの原因として知られています。プロテアソームの解析は、細胞の生命活動の理解はもちろんのこと、医学分野にも多大なる貢献をもたらすでしょう。

巨大で複雑なタンパク分解装置の動態と作動機構

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