研究課題
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膜タンパク質結晶化の革新的支援法の開発(H19〜H21)

代表機関:京都大学大学院薬学研究科
代表研究者:加藤博章

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膜タンパク質は生命現象において重要な役割を果たしており、創薬につながるものも多いのですが、構造解析は一般的に困難です。特に問題となるのは、タンパク質の生産と結晶化という二つの段階です。

タンパク質を生産するには、タンパク質の「設計図」が記録されているDNAを大腸菌などの細胞に導入し、その細胞を培養してタンパク質をつくらせるという方法がよく使われます。膜タンパク質の場合、細胞の膜に埋め込まれた状態で、しかも、生体内ではたらいているのと同じかたちでつくらせたいのですが、細胞がいつもこの期待に応えてくれるとは限りません。もし、期待通りにつくってくれても、細胞の膜が膜タンパク質で満員になれば、それ以上はつくってくれません。というわけで、生体内と同じかたちの膜タンパク質を大量に生産するのは難しい仕事なのです。

一方、膜タンパク質は結晶化もたいへんです。膜タンパク質は界面活性剤を用いて膜から溶かし出し、結晶化させるのですが、このときに膜タンパク質が壊れてしまうことも多く、また、苦労してつくった膜タンパク質が結晶化してくれないということも、よくあります。

そこで私たちは、この二つの問題を解決する技術を開発し、膜タンパク質の構造解析に役立てたいと考えました。

一つは、少量の膜タンパク質を用いて、それが結晶化するかどうかを判定する技術で、分担研究者である理化学研究所播磨研究所の山下敦子チームリーダーが開発しています。目的の膜タンパク質に蛍光タンパク質で目印をつけ、細胞につくらせた未精製の膜タンパク質をゲルろ過という方法で分析するだけで、結晶化しやすいかどうかを判定できます。すでに細菌の膜タンパク質で成果を上げているので、当課題では、ヒトなど真核生物の膜タンパク質にも適用できるようにし、合わせてハイスループット化も図ります。

もう一つは大量生産の技術です。この技術では、大腸菌ではなくメタノール資化性酵母を用います。この酵母にメタノールを与えて培養すると、ペルオキシソームという、膜で囲まれた小器官がどんどん大きくなります。このため、この膜に目的の膜タンパク質を集められれば、大量の膜タンパク質がちゃんと膜に埋め込まれた状態で得られるのです。私は以前から、膜タンパク質をペルオキシソームの膜内に引き込むはたらきのタンパク質の構造と機能を研究してきており、当課題では、多様な膜タンパク質をつくれる酵母を育種するつもりです。

以上の二つをつなぐ技術も開発し、結晶化しやすい膜タンパク質を大量につくれるようにしたいと思っています。

膜タンパク質結晶化の革新的支援法の開発
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