研究課題
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タンパク質生産技術開発に基づく「タンパク質発現ライブラリー基盤」の構築

代表機関:理化学研究所横浜研究所
代表研究者:横山茂之

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タンパク質の機能と構造を調べるには、まず目的のタンパク質を合成・精製して試料をととのえます。立体構造を知るためにX線構造解析を行うには、試料タンパク質を結晶にすることが必要です。ところが、重要な生命現象を担うタンパク質の中には、合成や結晶化が難しいものが少なくありません。生体膜に埋まるように存在する膜貫通型タンパク質やさまざまの分子が結合した巨大な複合体タンパク質はその代表的な例です。合成や結晶化の難点を解消する技術の開発は、タンパク質の機能と構造を知る上で大きな課題となってきました。私たちのグループの目標は、このための核心的な要素技術を開発することです。

解析に必要な量のタンパク質を得るには、大腸菌や酵母などの生きた細胞につくってもらう方法のほか、細胞の内容物を取り出して試験管内で目的のタンパク質を合成する無細胞タンパク質合成法が考案されました。この技術には、細胞にとって毒性をもつようなタンパク質でも扱える、いろいろな物質を加えて調べられるなどの利点があるため、大腸菌、小麦、ヒトなどに由来する細胞を活用する方法が工夫されています。

私たちの研究グループは、無細胞系に界面活性剤を加えたり、細胞膜に近い構造の脂質二重膜を加えて、膜タンパク質を合成することに成功したほか、ヒトの培養細胞を使って分子量15万を超える巨大タンパク質を合成することにも成功しています。この方法で、各種の受容体やその活性化酵素、イオンチャネルタンパク質、輸送タンパク質など40種類を合成して結晶化し、解析データを揃えたいと計画しています。

結晶化についても、私たちはさまざまな技術を提案してきました。脂質二重膜の中でタンパク質を合成し、そのまま結晶化する方法、液晶のキュービック相を利用して結晶にする方法、ゼオライトを活用する方法など、タンパク質の個性に合わせて安定的に結晶化する技術の開発を進めています。

タンパク質の構造と機能は表裏一体と言えるでしょう。私たちはこれからも、機能を表す代表的なタンパク質の構造を明らかにすることに貢献したいと考えています。

タンパク質生産技術開発に基づく「タンパク質発現ライブラリー基盤」の構築
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