研究課題
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高難度タンパク質をターゲットとした放射光X線結晶構造解析技術の開発

代表機関:高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所
代表研究者:若槻壮市

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ヒトなら数十兆個あるとされる細胞の中では、さまざまなタンパク質が能動的に動いて生命活動を維持しています。生きているという状態を理解するために、細胞内のタンパク質のダイナミックな姿を原子のレベルでとらえたいというのが私たちの願いです。それを知るには、電子顕微鏡、NMR、質量分析などの方法がありますが、放射光X線によるタンパク質結晶構造解析は最も強力な手段です。

放射光X線とは、数十億電子ボルトまで加速した電子ビームを大きなリング状の磁場の中で高速回転させたときに発生するきわめて強いエネルギーをもつX線です。平行で強度が高く、波長を変えることができる放射光X線は、生体分子の立体構造を調べるのに頼りになる存在です。精製して結晶にしたタンパク質にX線をあてると、一部が電子によって散乱されるので、これを観測してタンパク質の中の電子の分布状態を計算によって求め、そこから原子の位置や全体の構造を解明することができます。

現在、世界には40以上の放射光施設があり、タンパク質の立体構造解析がさかんに行われています。日本では、理化学研究所のSPring-8(兵庫県西播磨市)と高エネルギー加速器研究機構のフォトンファクトリー(茨城県つくば市)が代表的な施設です。どちらの施設でも、基礎研究や産業利用が活発です

私たちは、放射光施設をユーザーにとって使いやすいものにして、細胞生物学の研究者やお医者さんも高い精度で安定した測定ができるようなシステムを開発するほか、解析が難しい膜タンパク質や大きな分子複合体、たくさんのタンパク質がつくる高次のネットワークなどを解析しようと工夫を重ねてきました。

「技術開発研究」における課題の一つは、数μm程度のきわめて小さい結晶しかつくれないタンパク質を解析するために低エネルギー高輝度マイクロビームラインを設計・建設することです。これまで行われてきた重い原子セレンを取り込ませて位相を知る方法から、タンパク質が本来もっているイオウを手がかりにする新しい方法「低エネルギーSAD法」を積極的に活用していきたいと考えています。

放射光X線を利用したタンパク質の立体構造解析には多くの要素技術があり、各方面と連携して技術開発を進める必要があることを実感しています。

高難度タンパク質をターゲットとした放射光X線結晶構造解析技術の開発

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